あの日から二日経った。
翌日は休みで早番というシフトにも関わらず、私の気持ちは晴れない。

単に何の予定もないからということでもなく、ここ二日斎藤さんを見かけなかったから……でもない。

だけど、彼をひと目見たいという気持ちはあった。

「あの、すみません」

落ち着かない思いで受付についていると、視界に人影が入ってきて声を掛けられる。
私は一瞬息を止め、肩を上げて驚いた。

「……あっ。い、いらっしゃいませ」
「ここに、マッターっていうメーカーの直営店入ってませんでしたっけ?」
「は、はい。6階にございます」
「あ、よかった。どうもありがとう」

急いでたのか、いきなり距離を詰めるように近づいてきたから警戒してしまった。

感じ悪くなかったかな。申し訳ないことをしちゃった。

小さな溜息と共に反省していると、東雲さんから声を掛けられる。

「野原さん、なんか今日変じゃないですか? なんかそわそわしてるっていうか」
「えっ。あ、ううん。なんでもないの」
「早番みたいですし、デートでもする予定なんですか?」
「デッ、デートとかじゃないよ!」

思い切り否定すると、余計怪しいって冷静になればわかるのに、いざとなったらやっぱりそううまくは反応できない。
誤解を招く私の様子に、東雲さんはものすごい勘違いをしてしまった。

「あ。もしかして、〝あの人〟とですか?」
「あっ、あの人って」
「斎藤さん、でしたっけ? そんなに動揺するなんて、彼氏じゃないと思いましたけど」