プロフィール

菊池まりな
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菊池まりな です。
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作品一覧

その名前を、呼べたなら

総文字数/21,134

恋愛(ピュア)6ページ

第10回野いちご大賞エントリー中
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市役所福祉課で働く佐倉恒一は、三十五歳。穏やかで誠実な性格だが、人との間に一定の距離を保ち、感情に踏み込むことを避けて生きてきた。誰かを大切に思うほど、失う怖さが大きくなることを、彼は知っているからだ。 ある日、恒一は九歳の少女・山本ひよりと出会う。母親の体調不良を心配し、ひとりで窓口を訪れた彼女は、別れ際にふと呟く。 「大人って、名前を呼ぶの、遅いよね」 その言葉は、理由の分からないまま恒一の心に残り続ける。 病院との連携を通して、恒一は医療ソーシャルワーカーの篠原由紀と知り合う。由紀は人の痛みに真っ直ぐ向き合う女性だった。仕事を重ねるうち、二人は少しずつ距離を縮めていくが、恒一は由紀の名前を呼ぶことができない。惹かれているはずなのに、一線を越えることを恐れていた。 恒一が感情を閉ざす理由は、過去にあった。 入院していた母からの留守電を後回しにし、折り返さなかった夜。翌朝、母は亡くなっていた。「呼ばれたのに、応えなかった」後悔は、恒一の中で消えない傷となり、誰かを深く想うことそのものを拒ませていた。 一方、ひよりの母・美和の容体は悪化していく。名前を呼ばれることを避け続ける母と、呼びたいのに呼べない娘。大人たちが踏み出せずにいる中で、子どもであるひよりだけが「終わりの気配」に気づいていた。 美和が緊急入院となり、恒一は再び立ち止まる。しかし由紀の問いかけが、彼を揺さぶる。 「今度も、逃げますか?」 母の遺品から見つけた手帳には、短い言葉が繰り返し書かれていた。 ――今日は、恒一を呼んだ日。 名前を呼ぶことは、存在を認めること。失うためではなく、生きている今を確かめるための行為なのだと、恒一はようやく理解する。 病室で、ひよりは母の名前を呼ぶ。微かな反応。 同じ瞬間、恒一は心の中で初めて由紀の名前を呼ぶ。 すべてが終わったあと、恒一は由紀の名前を声に出す。それは告白ではなく、未来へ踏み出すための小さな一歩だった。 振り返った彼女の名前を、今度は迷わず呼べる気がした―― 静かな恋の始まりとともに、物語は幕を閉じる。
名前を呼ぶまで、春は来ない

総文字数/25,410

青春・友情6ページ

第10回野いちご大賞エントリー中
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人と深く関わらず、ただ波風を立てないように日々をやり過ごす高校二年生・桜井澪。教室にいてもいなくても変わらない存在でいることが、彼女にとっての安全だった。中学時代、孤立していた親友に声をかけられなかった――その後悔が、今も澪の心を縛り続けている。名前を呼ぶこと、呼ばれることは、彼女にとって「踏み込む」行為だった。 新学期、成り行きで足を踏み入れた写真部で、澪は朝倉恒一と出会う。穏やかで、他人の話を急かさずに聞く彼は、澪の撮る写真に不思議な温度を感じ取る。「静かだけど、逃げていない写真だね」――その一言が、澪の胸に小さな波紋を広げる。写真を撮る時間だけは、言葉にできない本音を隠さなくてよかった。二人はシャッター越しに、少しずつ距離を縮めていく。 やがて澪は、恒一が数年前に兄を亡くしていることを知る。最後まで名前を呼べなかった後悔を抱えたまま、彼もまた前に進めずにいた。互いの痛みに触れたとき、二人の関係は友情とも恋ともつかない、確かな絆へと変わっていく。しかし、澪の過去を知る同級生の噂がきっかけで、彼女は再び孤立へ追い込まれる。写真部の居場所も壊れ、「私はやっぱり、誰の人生にも必要ない」という思いが、澪の心を覆っていく。 迎えた写真展当日。澪は会場へ行かないつもりだった。けれど、母の何気ない言葉に背中を押され、足を運ぶ。そこに展示されていたのは、澪自身が撮った一枚の写真と、空白だけが記されたタイトルだった。人混みの中、不意に名前を呼ぶ声が響く。真正面から向けられたその呼び声に、澪は初めて立ち止まり、逃げずに応えようとする。 名前を呼ぶことは、誰かの人生に踏み込むこと。名前を呼ばれることは、自分の存在を肯定すること。 春は、名前を呼ばれたところから始まる――これは、声を失った少女が、自分の人生に返事をするまでの再生の物語。
アンケート ― 選ばないという選択 ―

総文字数/23,651

ミステリー・サスペンス10ページ

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アンケート事件からしばらく後。 三枝美佳は、選択に縛られないはずの日常の中で、些細な決断さえ迷う自分に気づいていた。 停止したはずのシステム〈LAPIS〉は、水面下でなお人々の“選択の痕跡”を集め続けており、美佳は今度は被験者ではなく「次期アンケート設計者候補」として目をつけられる。 同時に、強制ではないが「答えないと不安になる」新たなアンケート文化が広がり始めていた。 世界を変える力を持つ問いを作れるのは、美佳しかいない──そう信じる者たちと、再び誰かを選ばせてしまうことへの恐怖の間で、美佳は揺れる。 そして彼女が選んだのは、問いに答えることでも、問いを作ることでもなかった。 美佳は「選ばない」という選択を引き受け、答えのない問いを抱えたまま生きる道を選ぶ。 問いを疑う自由こそが、人間らしさなのだと信じて。
恋のリハーサルは本番です

総文字数/302,112

恋愛(ラブコメ)218ページ

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――恋のリハーサルが、本当の恋になるなんて誰が思っただろう。 新人舞台俳優・桜井蓮は、初舞台を控えて緊張の日々を送っていた。 そんな彼の前に現れたのは、明るく天真爛漫な若手脚本家・水無月あかり。 台本を通してぶつかり合いながらも、二人は次第に互いを支え合う存在となっていく。 ところが、蓮のライバル俳優・高峰翔の登場により、稽古場の空気は一変。 さらにヒロインの代役として、蓮の幼なじみで彼に想いを寄せる椎名美咲が加わったことで、 恋と芝居の境界線が曖昧になっていく。 「恋を知らなきゃ、恋を演じられない」 ――あかりの提案で始まった“恋愛リサーチ”という名のデート練習。 それはやがて、二人にとって“リハーサルではない本当の恋”へと変わっていく。 舞台の成功、すれ違い、嫉妬、告白未遂―― 幾度もの誤解と試練を経て、蓮とあかりは互いの本当の気持ちに気づく。 初舞台を成功させた後、俳優として成長していく蓮と、脚本家として羽ばたくあかり。 離れていても心はつながり、再会の日に二人は再び“人生という舞台”で結ばれる。 ラストシーンでは、映画の初日舞台挨拶で蓮がサプライズ・プロポーズ。 あかりの涙の返事は「はい、喜んで!」 ――二人の物語は、ようやく“リハーサル”を終えて“本番”を迎える。 エンドロールでは一年後、新居で台本を読み合う二人の姿。 「愛してるよ、脚本家様」「私も、俳優様」 笑顔で抱き合う二人の姿が、まるで幸せなラストシーンのように幕を閉じる。
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25歳の朱里は、同じ部署の先輩・嵩にずっと片想いをしていた。けれども不器用な朱里は、素直に「好き」と言えず、口から出るのはいつも「大嫌い」。彼女のツンデレな態度に最初は笑って受け流していた嵩も、次第に本気で嫌われていると思い込み、距離を置き始める。 そんな中、後輩の瑠奈が嵩に好意を寄せ、オープンに想いを伝えていく。朱里は心の奥で「私は本当は死ぬほど好きなのに」と叫びながらも、意地とプライドが邪魔をして一歩踏み出せない。 しかし、嵩の転勤が決まり、別れが迫ったとき、朱里はついに「大嫌い」と100回も繰り返した心の裏にある“本音”を告白する決意をする――。

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