「…つ、つまりもっと警戒心持てっつか…」



棗様は少し頬を赤らめている。


棗様がそんな風に私を思って言ってくださるなんて、嬉しいことこの上ありません。


私は笑顔を棗様に向けて、快く返事をした。




「はいっ」


「…わ、分かったならいい」




棗様はそう言いつつコホンと咳払いをした。


でも警戒心持てって言っても、相手は私と身分の差があり過ぎる方だし、

そんな方にメイドの私なんかが抵抗してもいいものかと少し遠慮がちになってしまう。


それでも少しは気を付けといた方がいいという忠告なんだろうな、きっと。



棗様は優しいお方だ。




「あの…それでは私は片付けに戻りますので」


「あっ、す、すまん」



慌てて棗様は私を解放してくれた。

私は棗様に一礼をして、お盆に乗せたカップやお皿を運び出す。



……棗様があの時、私を心配して下さったのは本当に嬉しかった。


こんな私に、あんなに優しい言葉を掛けて下さった棗様は、本当に輝いて見えて…。



こんな気持ちになったの、久しぶりだ。



……この気持ちって、いつのだっけ。