目で「こっちに来い」と呼ばれ、私は素直に棗様のもとへと近寄った。
「…どうした?」
「棗くん…あまりメイドを甘やかすのは、」
「すみません綾小路さん。少し席を外して下さい」
綾小路様の忠告を遮った棗様は、無表情で彼女を見つめた。
そして綾小路様は眉尻をハの字に下げて、悲しげに微笑みながら馨様達の方へ向かって行った。
申し訳ありません……綾小路様…。
「…花?」
「……」
心配そうに私を見上げる棗様は、優しく私の手を掴むのです。
私は出来る限り首を振りました。
「た、体調が悪くなりまして、」
「……花」
「……申し訳ございません」
やはり棗様に嘘は通じない。
それでもじっと私を見つめる棗様に、私は安心してしまう。

