「…花」
と、不意に棗様の呼ぶ声が耳に入る。
くるりと振り返ると、棗様は椅子に座って肘をついていた。
その無表情の整ったお顔は私をじっと見つめておりました。
慌ててパタパタと棗様のもとに近寄れば、棗様は肘をついたまま私を見上げたのです。
「ご苦労様」
そう優しく私に微笑んだ棗様。
つ、罪なお方だ。
簡単に私の心臓はドキドキと鳴り出す。
そんな棗様のお言葉に私は嬉しくて、ぽおっと頬が火照るのであります。
「あ、ありが、」
「棗くん」
と、棗様の座る椅子の横からスッと視界に入って来た方に私は顔を上げた。
なんとも美しく笑顔が素敵な女性だろう。
「随分若いメイドがいるのね」
「俺の専属メイドです」
「へぇ、可愛いね」
ふんわり微笑むそのお方に、私はドキッとしつつも首を振った。
そんなあなた様のような美しい方に可愛いだなんて恐れ多すぎますとんでもないっ。

