「何か悩み事でもあるの?」
「いや、特に……」
「そう…それは残念」
そうクスリと笑う綾小路に、棗は首を傾げた。
すると綾小路は静かに棗の隣に座った。
「前の集会のスピーチ、素敵だったよ」
「あぁ、ありがとうございます」
「もう、私には敬語使わなくていいって言ったのに」
男を簡単に惚れさせてしまうような無邪気な笑顔を棗に向けて、髪を耳にかける。
「そんなわけにはいきませんよ」
「…なんで?」
「なんでもです」
こちらもと綺麗な笑顔を綾小路に向ける棗。
その笑顔を見て、綾小路はまたクスリと笑った。

