「なんて疲れる…」
ぐったりと背もたれに身を預ける棗は、また大きな溜息を漏らした。
こういう時は甘いものが食べたくなる。
ボーッとしながらそんなことを思う棗は、ふと花の顔を頭に浮かべた。
「(花のお菓子が食べたい…)」
青く広がる空をぼんやりと見つめていると、ふと鼻をそそる甘い香りがした。
と、その時。
「…むぐっ」
突然棗の口に得体の知れない何かが突っ込まれた。
飛び起きてその犯人を見つつ、棗は口に入ったそれにふと意識を向けた。
「…クッキー?」
「えへへ」
サクサクとそのクッキーを噛みながら、再び目の前に立つ女生徒に目を向けた。
そこにいたのは、クラスメイトの綾小路久美子であった。
「綾小路…さん?」
「元気出た?」
「…え?」
「棗くんずっと溜息ついてたから、甘い物あげたの」
「…あ、それは、どうも」
「どういたしまして」
ニコリと優しく微笑む彼女は、清楚な雰囲気を醸し出していた。
黒く切り揃えられた長い髪が小さな風に揺らされる。
学校でもとてもモテる女生徒である。

