——そして棗様のご帰宅の時間となった。
今。
「わぁ!やはり滝沢財閥のお屋敷となれば他と格が違うわねぇ!」
制服をまとった、見知らぬ美少女がサラサラの長髪を振り乱しながら玄関ホールで感嘆の声を上げる。
私はシフォンケーキを持ったまま硬直している。
「…すまん。どうしてもってうるさくて」
コソッと私に耳打ちをする棗様を、不安気に見上げた。
…すると棗様は気まずそうに私から目を逸らす。
「く、クラスメイトですか…?」
「いや、副会長」
な、なるほど。
大興奮でホールを見渡す彼女に目を移すが、いまいち納得出来ない気もした。
つまりは、副会長である彼女が棗様に懇願して家に招いてもらったということだろう。
「…あら?」
パチっと彼女と目が合い、私はビクッと肩を跳ねさせた。

