——コンコン。
焼き上がったクッキーと先程入れた紅茶を持ち、私は棗様の書斎へと失礼した。
中を見ると、机に寄り掛かったり椅子に座って本を読むお二人の姿が見えて。
私に気付いてパッと顔を上げる。
「お茶をお持ちしましたっ」
「ありがとう。わぁクッキーだ」
「やけに甘い香りがするな」
「メープルを入れてみました。お口に合えばいいですが…」
そう言ってそれらを机に置く。
早速お二人はまだ温かいクッキーを一つずつ手に取り、口へ運んだ。
私はその様子をドキドキしながら眺めた。
「美味しい!」
「…美味いな」
や、やった!
うわー、すごく嬉しい。
「お菓子作り得意なんだねー」
「はいっ。よくお母さんと作ってて」
「へぇ、いいね。甘過ぎるのあんまり棗好きじゃないからこれすごく丁度いいよ」
あ、そうなのか。
良かったぁー!
これからはそれを踏まえて作ろう。
「紅茶も美味しいし、もうすっかり立派なメイドじゃん」
優しく微笑む馨様に、私は目を見開いた。
…立派な、メイド…?
そう、なれてきてるのかな。
嬉しいことが多過ぎる。
「ありがとうございますっ」
私は二人に満面の笑みを向ける。
こんなに嬉しい気持ちになれたのは、お二人のおかげです。
すると、お二人はじっと私を見つめたあとお互いを見合った。
…?