「…なら私の家で働くかい?」
「……へっ?」
「私の家は広い屋敷でね。ちょうど最近メイドが一人辞めていったんだよ」
…え、待って。
メイド……??
ってことはこのおじさん、ほんとにお金持ち…!?
いやいや、さっき初めて会った人をそんなにやすやすと信じたら駄目だ。
……私を騙してるのかもしれない。
「名刺を渡しておくよ。……どうかな?」
おじさんから渡された名刺を見て、私は驚愕した。
〝滝沢グループ〟って……私でも知ってるよ。
色んな事業を展開してる超大手の……。
その社長がこのおじさん……?
え、ってことはこのおじさん…めちゃくちゃ偉い人なんじゃ…。
「…信じてもらえたかな?」
「は、はい…」
ぎ、逆に信じ難いけど。
「それで、ぜひ君を雇いたいんだけど…どうかな?」
滝沢グループの社長ともあろうお方が私を直々にメイドとして雇ってくれるなんて、こんなうまい話……あるんだろうか。
いや実際目の前でそれが起こってるんだけど…。
……でも、私には断る理由がない。
「よ、よろしくお願いしますっ」
あの叔母さんと暮らさなくて済むなら、もう何が起きても良かった。

