——そろそろ学校が終わる頃。
私は棗様の帰りを待ちつつ、屋敷の中を歩き回っていた。
1日でも早く屋敷の中を把握するためである。
…それにしても広いなぁ。
「——…じゃ、ここで待ってる」
と、角の先から何やら声が聞こえてきた。
確かあちらは玄関ホールのはず。
お客様かな、と私はひょっこりと角から顔を覗かせた。
そこで目に飛び込んできた人物に私は思わず、あっと声をあげて驚いてしまった。
「…ん?」
メイドか執事に出されたであろうお茶を優雅に飲みながら、その方は私に気付いた。
綺麗な髪と顔立ちは見覚えがあった。
その男性は私を見ると、少し首を傾げてティーカップを置く。
「君は…?初めて見るね」
優しく微笑むその笑顔は、やっぱり先程棗様の部屋で見た写真の方であった。
王子のような雰囲気を醸し出しながら、私をこちらに来るようにと促す。
私は恐る恐るそのお方に近寄った。

