こんなこと、言わなくても良かったんじゃないかと今更しても無意味な後悔をする。 棗様はゆっくり机から腰を下ろした。 …棗様はメイドの私なんかの事情を聞いても困るだけだ。 そんなのどうでもいいはずなのに。 「……」 「…わっ…」 棗様は私に近付くと、服の袖を私の目元に擦り付けた。 もちろんそれは、私の涙を拭って下さっていたのだ。 「……」 そして、ポンポンと私の頭を撫でた。 …棗様にとって、どうでもいいことのはずなのに… この人になら話したいと思ってしまうんだ。