「わぁ…」
「花は本読むのか？」
「いえ、あまり…」
「ふーん」
少し残念そうに私から顔を逸らした棗様は、本棚に目をやった。
「棗様はお好きなんですか？本」
「すごく」
とても綺麗な笑顔を一瞬私に向けて、棗様は本棚から一冊の小説を取り出した。
…それをパラパラとめくるそのお姿は、〝綺麗〟と例えると本当にピッタリである。
「小説は想像するのが楽しくて仕方ない。これも」
その小説を私に一瞬掲げて見せ、棗様はドアから正面の奥にある机に座った。
「…どんな話なんです？」
「ある少女とそれに想いを寄せる少年の話。恋愛要素以外の展開も豊富で読みやすい」
「へぇー、面白そうですねー！」
ワクワクしながらそう言うと、棗様は本から私に視線を移した。
そして、その嬉しげで優しい笑顔に私の心臓はまたもや大きく跳ねた。
…棗様は綺麗過ぎる。
「好きなものを褒めてもらうのは嬉しいな」
そうやって微笑んで下さる棗様。
私はそれが嬉しくて仕方がありません。
