「わぁ〜そうなったらいいわねぇ〜!」




なぜか茜さんが楽しそうにしている。


……でも私なんかが棗様の専属メイドなんて、務まるはずがないですよ。

ただでさえ初対面からあんな失態を犯してるんだし……。




「……あ」




と、

廊下の角を曲がると、不意にそんな声が聞こえた。



振り向くと、そこには背の高いシュッと引き締まった若い執事が立っていた。


……せ、背高いなぁ。




「宮本」


「あらぁ!有馬(ありま)くん!」




その執事に笑顔で手を振る茜さん。


どうやら二人は知り合いらしい。


いや、仲が良いのか。

執事とメイドだから、知り合いなのは当然だもんね。




「うふふっ、お仕事頑張ってね〜!」


「……なんでそんなにテンション高いんだ」


「なぁんでもないわよぉ〜!」




そう笑いながらその執事の肩、というか腕をペシペシ叩く茜さん。


……?




「それじゃあね〜!」


「……」




そう言って有馬さんを置いて歩き出した茜さんに、私は慌ててついていった。



そしてゆっくりと有馬さんを振り返る。



……有馬さんって、クールな方だなぁ。

そんな人と茜さんが仲良いとは、少し意外だった。