「はぁ、落ち着く」
「……っ」
棗様の声が、耳元で聞こえる。
体が密着してるわけじゃないけど、この心臓の音が棗様に聞こえてしまわないか果てしなく怖い。
それくらい近いし、音がすごいんだ。
ていうか棗様はこんな状況で落ち着けるのですか!?
「……いい匂いがする」
「……えっ」
言葉の意味を理解しようと頭をフル回転させるけど、よりパニックになるだけだった。
すると棗様はするっと私の腰に手を回してこられた。
ひ、ひゃあああ〜〜〜〜!!
「……花は俺の専属だろ」
「……へ?」
「なんで俺が我慢しなきゃならないんだ」
……棗様?
「おかしいだろ。花と婚約したのに……なんで前より話す時間がなくなってるんだよ」
「……も、申し訳ありません」
「いや花は何も悪くない。自分勝手な俺が悪い」
ぎゅっと優しく棗様は私を抱き寄せた。
棗様の腕の中はとても温かくて、なんだか泣きそうになった。
……棗様、そんな風に思ってらしたんですね。
棗様との時間が少なくなって、寂しくなってるのは……てっきり私だけかと。
か、感無量です……。
「まあ、花を引っ張り回す母さんにもイラつくけど」
「響子様にですか……?でも、それは私の為に……」
「いや違う。それもあるかもしれないが、多分自分本位なだけだ」
そ、そうなのか……。
私としてはそれでもお呼び頂けるのは嬉しいのですが。
でも、これってヤキモチなのでしょうか。
そうだとしたら……私嬉し過ぎて死んでしまいそうですよ。

