――お風呂に入った後、私は寝巻きのまま棗様のお部屋へ向かった。
誰もいない、薄暗い廊下。
自分の歩く足音だけが小さく響いている。
……どうしよう。
ほんとに棗様のお部屋に向かってる。
ドキドキし過ぎてお風呂に時間掛かっちゃったけど、棗様まだ起きてるかな。
もし寝てたら……どうしよう。
そのまま寝かせて、私は部屋に戻った方がいいかな。
そんなことを悶々と考えながら、私は棗様のお部屋のドアをノックする。
ゆっくり扉を開いて、そーっと中を覗いた。
「失礼致します……」
ベッドに棗様の姿はなく、私はきょろっと部屋の中を見渡した。
棗様は勉強机に座って勉強に励んでおられた。
「あ、来たか」
「お待たせ致しました……」
「勉強してたから問題ない」
棗様は勉強道具を片し、そのまま流れるようにベッドに上がった。
そして私を急かすようにご自分の隣をぽんぽん叩く。
「……ま、参ります」
聞こえるか聞こえないか、私は小さな声を漏らしてベッドに近寄った。
ゆっくりベッドに座ると、棗様はグイッと私を引き寄せて一瞬で添い寝の状態にもっていったのだ。
向かい合って、軽く抱き締めるような状態での添い寝。
私の目の前には棗様の懐が見える。
……体の熱がとんでもない。
そういえばこんな状態、以前もあったような。
確か私が棗様の専属メイドになったばかりで……。
あの時も今も、ドキドキするのは変わらない。

