「花ちゃんの存在を知って、私かなり焦ってたかも。きっと棗くんは、いつか私のこと好きになってくれるだろうって信じてたから。
……そうじゃないかもって思い始めて、かなり強引な手を使っちゃった」
「……」
「私、花ちゃんが棗くんのこと好きなの知ってて色々いじわるしちゃってた。……本当にごめんなさい」
真剣な表情で深く私に頭を下げた綾小路様。
思わずぎょっとした。
「あ、綾小路様!?お顔を上げて下さいっ」
「棗くんと響子さんが私の家に来て、婚約を破棄したいって言われて……なんかすごく納得しちゃったんだ。
私、あのまま棗くんと結婚しなくて良かったのかもって。危うく一生後悔するところだった」
「……え?」
「棗くんは花ちゃんと結ばれる運命なのよ。棗くんを幸せに出来るのは、きっと花ちゃんしかいないわ」
そう言って、綾小路様はゆっくりと頭を上げる。
その瞳は少し潤んでいて、それがより一層輝いて見せた。
「だから私は潔く身を引くわね。それがイイ女でしょ?
……花ちゃん、棗くんと幸せになってね」
えへへ、と可愛らしく笑う綾小路様。
その姿があまりにも綺麗で、かっこよくて、可愛くて
女の私でも恋に落ちそうになった。

