――「あら、〝想ってる人〟ってそのメイドだったの?」
ティーカップを片手に、軽い声を上げたのは響子様だった。
そして部屋の隅に立つ私に目を向ける。
「意外ね」
「綾小路家の件に関しては悪いと思ってるが、そもそも俺は許可してなかったからな」
「はいはい、分かってるわよ。私も悪かったわ。
棗にもちゃんと心に決めた人がいるなんて、とんだお節介だったみたいね」
「……まあ、今回の件でそういう気持ちに気付けたところもある。一応、感謝してる」
「あら珍しい。あなたも変わったわね。
……変えたのはそのメイドなのかしら?」
「ほっほ、そうかもしれないな」
今度は御三方が一斉に私に注目したので、私は必死に目を泳がせた。
な、なんというプレッシャー。
滝沢家一同の眼力は凄まじい。
……でも、意外だった。
社長も響子様も、私と棗様のことについてそこまで驚かなかった。
こんなにもあっさり受け入れて下さるなんて……。
滝沢家の懐の広さには感服致します。
「良かったね、花ちゃん」
優しい声でそう言ったのは社長だった。
まるで我が子を見守るようなその温かい眼差しに、私の心はほわりと和む。
……社長。

