「あっ」
「なんだ」
「マカロン……作ったんです」
調理場に置いたままのマカロンを思い出した。
私の言葉を聞いて、棗様はゆっくり私から離れた。
ようやく見えた棗様のお顔は、とても穏やかだった。
「それは良い。ちょうど腹が減っていた」
「では紅茶も入れますっ」
「頼む。俺は親父と母さんを呼んでくる。
話しながら食べよう」
「……は、はい!」
そう言い残し、カツカツと廊下を歩き出した棗様の背中をしばらく見つめる。
……私、本当に棗様と両想いになれたんですね。
こんなこと、絶対無いと思ってたのに。
びっくりです。
これからどうなるんだろう。
棗様は主人で、私はそのメイド。
さすがにこのままってわけではないよね。
……メイドの仕事、もう出来なくなっちゃうのかな。

