「俺は自分で決めた相手と結婚すると決めていたからな。綾小路と結婚するつもりは元々なかった」
「……え、え!?」
「だが母さんの気持ちも汲んでたんだ。強引なのはあれだが、母さんは本当に俺の為に婚約を取り付けてくれていただろうから」
そんな風に思ってらしたんですね……。
〝これでもあなたを心配してるのよ。あなた、こうでもしないと恋人なんて作らないでしょ〟
響子様の言葉を思い出す。
これは響子様なりの愛だったんですね。
現に婚約のお断りも棗様と一緒に出向かれたわけですし。
「母さんは俺にちゃんとそういう相手がいれば満足するらしい」
「なるほど……」
「だから」
棗様はそこまで言って私の目をじっと見つめてきた。
真っ直ぐで曇りのない、美しい瞳。
心臓は相変わらずドキドキと鳴り止まない。
「花、俺と結婚しよう」
私の手を優しく取って微笑んだ棗様。
手も、眼差しも、言葉も、
何もかもが温かくて。
私の頬にはまた熱い涙が伝った。

