しかも綾小路様との婚約も断ったって……。
棗様がそんな嘘をつくはずもない。
「花は好きな奴がいるみたいだが、いずれ諦めてもらうからな」
「……へ?」
「花の好きな相手は俺じゃないと困る」
ぐっと近付いたその端麗なお顔に私はドキッと反応した。
次第に脳が追いついてきて、さっきとは違う感覚で心臓が暴れ始める。
これは夢でしょうか……?
本当に本当に、棗様は私のことを好きなんですよね……?
そんなの、私……
感無量です。
「……って、花!?なんで泣く……?」
「うっ……すみません……嬉しくて……っ」
ぼろぼろと目から溢れる涙を見て、棗様は戸惑っている様子を見せる。
そして持っていたハンカチで私の涙を拭って下さった。
……メイドである私が主人のハンカチで涙を拭うなんて……。
そう思いながらも、感動で心がいっぱいな私はハンカチを断れなかった。
棗様、私の好きな人が誰か気付いてなかったんですね。
私のとんだ勘違いだったのか。
……私振られたんじゃなかったんだ。
だから棗様はあんな表情を……。

