前川さんは元々、棗様を狙うような若い女性をここに入れなかったし。
専属である私が棗様のことを好きだったなんて……一番駄目なやつじゃないか。
「あら、私が気付いてないとでも?残念だけど、すぐ気付いてましたよ」
「……申し訳ございません……」
どうしよう。
怒られるかな。
もしかしたら辞めさせられるかもしれない。
……それだけは嫌だっ。
「……っあの――」
「なんで謝るんですか。別に責めてませんよ」
…………え?
「そうなるだろうって最初から思ってましたし、メイドが主人を想ってはいけないなんてルールは存在しません」
「……で、でも」
「私は滝沢家の為になることをしたいだけです。それに、私は滝沢家を信じていますから」
真っ直ぐ、落ち着いて前川さんはそう話した。
曇りのないその眼差しに圧倒される。
「あなたを社長が雇ったことも、棗様が専属にしたことも、私は良い事だと信じてました。
……結果、それは当たってました」
前川さんは少しだけ口角を緩めて、穏やかに話される。

