「……いい匂いがする」
眠たげな小さな声が私の左肩の方から聞こえる。
私は棗様の居心地が悪くならないように微動だにしなかった。
い、いい匂い…!?
洗剤はこのお屋敷の物を使ってるのでそりゃいい匂いはする、かな…??
汗臭くなくて良かった……。
「……花が辞めなくて良かった……」
ぽつり、と。
また小さな声が漏れる。
棗様……。
そんなに気にしてらしたなんて……。
咄嗟にあんな例え話を用いてしまった愚かな私をお許し下さい。
「とんでもないです、棗様。私はずっと棗様にお仕えしますっ」
「……そうか」
ドキドキと鼓動が激しく鳴り続ける。
大好きです、棗様。
私は棗様のおそばにいられれば、それだけで幸せなのです。

