「わ、私は……社長にも棗様にも御恩がありますので……辞めようなんて思ったことありませんよっ」
「……恩か」
棗様はそう呟いて顔を逸らした。
社長にはこの身を拾って頂いて、
棗様には孤独さや叔母さんとのことを解消して頂いて。
本当に感謝しているんですよ。
「……俺は花が気に入っている、と言ったな?」
「え?」
「気に入っているからこそ、そばに置いておきたいと思っている」
「なっ…」
棗様!?
突然そんなことを言って私をどうする気ですか!?
私の心臓は先程から爆発しそうなほど暴れております!
と、棗様は顔を上げて私に向き直った。
「花は、俺に恩返しをする為だけに仕えているのか?」
私を見つめるそのお顔は
どこか寂しさを含んでいるように見えた。