* * *
――『有馬くん!』
『なんだ宮本』
『使用人用のエプロンの在庫がなくなったんだけど、どこに取りに行けばいいんだっけ?』
『……何回言ったら分かるんだ。北館2階の東奥突き当たり女性使用人用具室入って左手の棚だ』
『ひ、一息で言わないでよぉ!』
『何回も言ってるだろ。そもそもメイドのお前がなんで覚えてない』
『だってこのお屋敷広いんだものぉ!』
『……ふっ』
『…へ?なんで笑ったのぉ?』
『いや…出会った頃からずっとこの屋敷で迷子になってるなと思って』
『な、なってないわよー!最近は迷子になる前にちゃんと確認するようにしてるもん!』
『それが普通だ』
『もぉ、いじわるしないでよぉ!』
――ふと懐かしい思い出が蘇る。
……有馬くんと最近、全然話してないわねぇ。
どうしてなのかしら…。
お互い仕事はいつも通りしているのに。
……私は、あの日有馬くんが抱き締めてくれて嬉しかった。
元気をもらったし、何より勇気をくれた。
有馬くんともっと仲良くなれたと思ったんだけど…。
話さなくなったのは私が横山さんに告白すると有馬くんに話した日くらいだったかしら…。
有馬くんに横山さんとのことも報告したいと思ってたのに。
……どうして?
「……変だわ」
どうしてかしら、
……どうして私はこんなに悲しいの。
有馬くんと話せないのが、
有馬くんに会えないのが、
とっても寂しい。

