「お前は仕事が出来る。人一倍努力もしている」
棗様は英語の本を閉じて淡々と話を続ける。
先程までここで英会話のレッスンを行っていたのだ。
沢田は今別の用件で前川さんに呼び出されている。
代わりに俺が棗様に付き添っていたのだが……。
「そんな、勿体ないお言葉…」
「そんなお前に足りないのは愛嬌だ」
あ、愛嬌……ですか。
俺には確かに程遠い言葉だ。
俺の第一印象はほとんど〝怖い〟だからな。
「まあそういうところがお前らしい。そのままでいていいとは思うが、もっと笑った方が仕事がしやすいと思うぞ」
「……左様ですか…」
「有馬は基本宮本といる時によく笑うよな」
…!?
なっ、
そ、そうだったのか!?
棗様に気付かれてしまうくらいだから…そうなのかもしれない…。
「そ、それは…」
「宮本はよく笑う。宮本の笑顔が少なからず有馬に良い影響を与えているように見えるが」
「……」
「宮本もお前の仕事ぶりを見て、ミスが目立たなくなってきているんじゃないか?」
「……」
棗様はじっと俺を見つめる。
棗様が何を思ってこんなことを言って下さっているのかは見当つかないが、
確かに棗様の言葉が俺に響いているのを感じる。
……そうだ。
俺は宮本のおかけで、今まで楽しかった。
あの笑顔が見れるだけで幸せだった。
そんな宮本も俺に付いてきて、一生懸命仕事に励んでいた。
その姿がたまらなく愛おしかった。

