「……あの」
「はっ」
彼女が俺の顔を覗き込んできたのに気付いて、俺はパッと顔を逸らす。
見すぎたか。
変な人と思われてしまったかもしれない。
そんな不安をぐるぐる考えていると、彼女はつんつんと俺の服を引っ張った。
「……あなたのお名前は…?」
……名前?
突然聞かれて少し俺は戸惑ってしまった。
とりあえず変人に思われてなくて良かった。
「…有馬だ」
「ありま…!有馬くん!」
「なっ…有馬くん…?」
なんという距離の詰め方だ。
早速君呼びしてくるとは。
思わず顔が熱くなるのを感じる。
「私は宮本茜って言うのぉ!よろしくね、有馬くん!」
明るく、可愛い笑顔が俺に向けられる。
柄にもなく、ふわふわとした気持ちになった。
可愛い。
まるで、天使みたいだ。
「……よろしく」
「えへへ〜」
この笑顔を守りたい。
ずっと側で見続けたい。
この時、俺はそう強く思った。

