「親父から一度聞いたことがある。有馬は宮本が大切なんだ、と」
棗様はそう言って再び私の前を歩き出した。
しゃ、社長がっ?
なんか……それはそれですごいなぁ……。
「それであの2人の様子見てたら大体分かるな」
「そ、そうだったんですか……」
でも……ご自身に向けられる好意というものには鈍いですよね…。
綾小路様のことも気付いてなかったし。
「まあそういうことなら、当人らがなんとかするしかないだろ」
「そうですよね…」
「あいつらの気持ちの問題だ。俺が介入しても事態が悪化するのは目に見えてる」
棗様の言う通りだ。
茜さんは横山さんが好きだったんだし、有馬さんはそれを知ってた。
その上で有馬さんが諦めるというなら、
ここに居辛いというなら、
私達が止める権利なんてない。
「花もあんまり考え過ぎるな。そんな暗い顔してたら有馬も宮本も辛いだろ」
「……は、はいっ」
棗様はすごいなぁ。
……私も、棗様みたいにしっかりしなきゃ…!
でも……茜さんは、どうするんだろう。

