と、私はハッと顔を上げた。
そういえば、前川さんに言われてた仕事が残ってたんだった…!
私はケーキを頬張る棗様を振り返る。
「棗様申し訳ありません、私少し仕事が残ってまして…」
「…ん」
「すぐに終わらせてきますのでっ」
「…ん」
位置的にやや上目遣いな棗様とその短い返事にいちいちキュンとする。
そして棗様に許可をいただいた私は馨様と小塚森様にも会釈をして書斎を後にしようとした。
と、その時。
「あぁ待って待って花ちゃん!俺ちょっとトイレ行きたいんだけど、ついでにトイレまで案内してくれない?」
小塚森様の言葉に私は足を止めて振り向く。
「もちろんですっ。では、」
「ちょっと待て」
私が小塚森様を連れて書斎を出ようと一歩足を踏み出した時、不意に棗様が私達を引き止めた。
私と小塚森様、モグモグとケーキを食べ続けていた馨様も棗様の方に目を向ける。
「小塚森、トイレなら書斎を出て左行って一番最初の角を曲がって突き当たりだ。一人で行けるだろ」
「えぇ~だって滝沢ん家広いから迷いそうだし~。俺方向音痴な時あるし~」
方向音痴な〝時〟とは。
「いいから一人で行け」
「いいじゃん別にトイレくらい、な?じゃ、行こ花ちゃん」
「え、あのっ…」
「おい、小塚森っ」
棗様が声を上げて止めるも、小塚森様は私の腕を引っ張り書斎を出てしまった。
でも確かにトイレくらい案内するのになぁ。
棗様一体どうしたんでしょう…?

