「それでここが社長の息子、棗様のお部屋よ」




棗という名前にドキッとする。


…私、そういえば御曹司に大変失礼なことを…。




「棗様は少しぶっきらぼうなところもあるけれど、すごく優しくてしっかりなさった男の子なのよ」


「…優しい…」





…茜さんが言うならそうなのかもしれない。


でも、初対面であんな失態を犯してしまった私はその棗様と果たして仲良くなれるのでしょうか…。




「棗様はこんなに歳の近い女の子がメイドに来たことないから、多分どうしたらいいのか分からないんだと思うわぁ」


「…私が初めてなんです?」


「うん。チーフの前川さんが、若い女の子あまり好きじゃないみたいなの」


「え!?」


「若い子って、棗様の玉の輿狙おうとする子もいるでしょ?」




…な、なるほど。


それならメイドチーフとして、前川さんもその危険がないようにするのは当然か。




「あ、でも花ちゃんは社長が直々に雇ったから、前川さんも安心してると思うわよ」




…よ、良かった…。


やっぱり、私が社長にして頂いたことって…すごいことなんだなぁ。