――コンコン。
「失礼します」
これぞ最悪のタイミングで部屋へと入って来たのはケーキとお茶を持った花である。
スッと顔を上げ、案の定その二人を見て固まった花。
棗と綾小路はポカンとしてそんな花を見つめる。
「…………あ、あー…すみません、とんだお邪魔を…」
フイと視線を二人から逸らした花は、変な汗を掻いてその場に立ち尽くす。
と、そばに丁度いいテーブルを見つけた花はすかさずそこにお茶とケーキを置いた。
その様子を見た棗は、花が部屋から出ようとしていることに勘付いた。
「ま、待て花」
「では失礼しますっ」
「花、」
棗が慌てて呼び掛けるが、そんなことは耳に入らず花は感心のいくスピードで部屋から出て行ってしまった。
再びシーンとする書斎は、なんとも居心地の悪い空気が流れている。
「……も、申し訳ないです」
「…棗くんは謝らないで」
スッと離れた棗は、不安気な表情のまま綺麗な床を見つめる。
そんな棗を見て、綾小路は眉をハの字に下げてクスリと笑った。

