イケメン王子の花メイド





俺は一体花をどう思ってるんだ。



確かに最近、異様に花が気になる。


花が小塚森と二人きりで話していた時も、ずっと変な気持ちになっていた。



……こんな変な気持ちになったのは初めてだ。


妙にモヤモヤする。



……胸やけか?




「……んー、ごめんなさい棗くん。ちょっとそこの本取ってくれない?」


「え、ああ分かりました」




うーんと背伸びをしながら少し高い所に並べてある本に手を伸ばす綾小路。


ガタッと立ち上がった棗は綾小路の背後に回り、その本を軽々と取ってみせた。




「…あ、あとその隣のもお願い」


「はい」




ひょいともう一冊取り上げて、棗がスッと綾小路へ視線と手を下ろした。


その時である。



「っ…!?」



綾小路はくるりと棗に体を向けて、本を持った方の手を軽く引っ張った。


その不意打ちによってバランスを崩した棗は慌てて綾小路の後ろに立つ本棚へ両手をついた。

前のめりになった棗と綾小路の距離はほんの20cmもない。



その状況は正に壁ドンする男と詰め寄られた女である。