二人きりになった棗と綾小路。
棗は呆然として綾小路を見ていたところで、ハッとする。
「…えっと、どうしたんですか?」
「棗くんに聞きたいことがあって」
「……え…」
ニコリと微笑む綾小路を見て更に首を傾げる棗。
そんな棗を見たあと、綾小路はくるりと本棚へ向き直った。
「棗くんはさ」
「……」
「花ちゃんのことどう思ってるの?」
本棚へと目を通しながら言った綾小路は、一瞬チラリと棗を見た。
そんな棗はしばらくポカンとして綾小路の言った言葉の意味を理解する。
……え。
なんだ?
一体どういうことだ?
「どうって……」
「ほんとにただのメイドなのかなーって。棗くん自分で思わない?……他のメイドと明らかに接し方が違うって」
どくん。と小さく跳ねた心臓に気付かず、棗はただただ固まって綾小路の背中を見つめた。
…違う?
確かに、そうだ。
今まで専属メイドなんて作ろうとも思わなかったのに、俺は自ら花を専属に任命した。
それでさえ明らかだ。
宮本や有馬達とは、態度が違う。
……でもなんでだ。
「花ちゃんが歳近いから?それだけ?」
「……俺には理解しかねます」
「ふふ、そう言うと思った」
窓から差し込む日差しによってキラキラと照らされる綾小路の笑顔は、正に男子悶絶寸前ものだった。
しかし棗にとってはただの微笑みに過ぎない。
そんなことより綾小路の言葉しか頭になかったのである。

