今までにないくらい必死に走って、桜田くんたちの通う宮坂高校に着いた。
校内にまで乗りこむことは問題になると困るからさすがにできない。
とりあえず門の前で酸素を取りこむことに集中する。
酸素不足でチカチカと光が瞬くわたしの瞳が、しばらくして落ち着いた頃に捉えたのは──桜田くん。
グレーのブレザーにえんじ色のネクタイ。
学ラン姿の彼しか記憶にないわたしだけど、ブレザー姿に違和感はない。
今の君を知っていきたいと素直に思える。
そして、彼はあと五メートルほどのところでわたしの存在に気づいた。
千果ちゃんはわたしが行くことを伝えられていなかったらしく、とても驚いている。
普段は感情を揺らさないはずだけど、なんだかわたしは彼の驚いた顔ばかり見ている気がするな。
桜田くんの視界にわたしがいる。
目が合う。
また、桜みたいな笑顔が見たいなぁ。
そう思って泣きそうになりながら、彼に笑顔を向けた。