桜田くんの第一ボタン





〝ごめんなさい〟と〝ありがとう〟が溢れて溢れて零れていく。



好きって言いたかった。

好きって言えなかった。



この一年間。

恐くて、桜を見るだけしかできなくて、近づけなくなっていたけど。



ゆっくりと足を進めて、川崎くんの目の前に立った。

瞳をしっかりと見る。






「川崎くんとは、お付き合いできません」






気まずくなっても仕方がないことを、してしまった。



だけど。

川崎くんを選ぶことはなかったわたしだけど、わたしなりに大切に思っていたことは本当だった。

それだけは、伝わればいいなぁ。



「うん。……行きなよ」

「……また明日ね!」



そう言うと、川崎くんはどこか泣いてしまいそうな、今日一番の笑顔を見せてくれた。