ボタンをリッパーで外して、糸を通してちくちくとつけていく。

その拍子に学ランから香ったこれは……桜?



ゆるりと首を傾げると、気づいた桜田くんに尋ねられる。

仕方がなく答えると、どうやら彼は昼休みに桜のそばで寝ていたらしい。



ふらりといなくなったなと思ったらそんなことをしていたんだ。

同じクラスになってはしゃいでいる大半の女子から逃げていたのかな。



優しい香りは少しわたしの緊張を和らげてくれたみたい。

肩の力が抜けていく。



香水とかは苦手だけどこの香りは、好き。



「できた」



はい、と言って手渡した。

なんだかんだで終わったことだし、帰ろう。

だいたいわたしは忘れ物の本を取りに来ただけなんだった。



本を机から取り出して、裁縫道具も片づける。