薬の袋から同じ速効性のある薬を取り出して助手席に置くとゆっくり注意しながら車を駐車場から出す。


他にも毎日飲む薬を貰ってはいるが速効性があるのはこの十五年同じ薬なのだ。


この薬に出会った頃は嬉しかった。


全く働けなくなっていた僕はこの薬のお陰で仕事に復帰できた。


最初は量も少なくて良かったが、徐々に増えて行った。


他の薬は数々変えてきたが、効き目を実感できる物は残念ながらなかった。


女を変えるように薬を変えたが、どの女も真の安らぎを与えてくれないように他の薬は通りすぎて新しい薬に変わる。


僕だってそれが本当の事或いは真実では無いのは分かってる。


女が悪いのではないのだ。


ところで真実って何だろう?


僕は徐々に効いてくる薬の幸福感を感じていたが、もう少し幸福感を感じたい為に信号で止まった時に助手席から薬を取ると運転しながらシートを歯で破り何錠か飲む。