君色キャンバス




二限目が始まった。



「〜を解く事とすると〜」



女性教師の声と、黒板を手でバァアンと叩く音が壁に共鳴する。



紗波はぼうっとその女性教師を眺めながら、次に何を描こうか悩んでいた。



「すると〜となる訳で〜」



紗波が被写体を見つけ、もう一度 鉛筆を握ると、淡い線、濃い線を描いていく。



教室の音は、黒板が出す音と、チョークと黒板が擦れる音、カツカツと鉛筆が文字を書き出す音、紗波が絵を描く音__それだけだ。



変わった音は、この時までしなかった。



__ドタドタドタドタ!!!!!



廊下を全速力で走る様な音が、生徒達の耳をつんざく。



紗波を除く全員が、その音の正体を確かめようと廊下に顔を向けた時__



ガラッと大きく音を立てて扉が開いたかと思うと、紗波と小百合にとって、見慣れた顔が飛び出した。



その人物は鍵を閉めると、ふうっと大きく息を吐く。



「あー疲れた…あ、ここ授業中か」


「あんた、何しにきたの!?」



女性教師がその人物を見て、叫ぶ。



その途端、廊下から



「流岡!立川先生、開けて下さい!」



という野太い声が。



「うぜ…あれ、久岡じゃん。今日はサボらねえの?」



「な、何を言ってるのあなたは!」



女性教師は鍵を開けようと、扉に走る。



教室内はワイワイと、クラスメイト達の話し声で騒がしい。



開けようとする瞬間、祐輝は窓に歩み寄ると、窓の外に出た。



ひさしの上に乗るのを見て、生徒達が一オクターブは声をあげて騒ぐ。



「じゃあなー久岡」



祐輝は手を振ると、ひさしの上を右に走って行った。



教室は喧騒に包まれる。



わっと、校長やら教頭やら生活指導の教頭やらが、二年三組の教室に雪崩れ込んできた。