紗波は何が起きているのか解らない様に首を振りながら、時計を見た。 八時十五分だ。 「さ、教室に行こ…」 小百合が紗波を立ち上がらせて、制服についた埃を優しく叩き落す。 くすんだ黒い埃が、美術室を舞った。 手を引かれ、扉に歩いて行く。 美術室から出る瞬間、紗波は棚の上に置かれている、眠る祐輝が描かれたキャンバスに目を止めた。 しかし、何も言わず目を逸らすと、美術室から出て、鍵をかけた。 埃 舞う美術室は、日の光にさんさんと当たり、静寂に包まれている。