さざなむ心のうちに語りかけるように、祐輝はホッと息をついた。
「…大丈夫…だよ…な…?カハッ…」
唇の端から垂れていく鮮血。
紗波が目を見開き、祐輝の右脇腹 辺りから突き出たナイフの柄から、視線を離せないでいる。
「…え…?」
チュンチュン、とどこかで小鳥の鳴く声が耳に届いた。
雲は穏やかに流れていき、空は海を写したように青く、太陽は光り輝く。
美術室の廊下の前に広がって行く、血の海。
「…ゲホッ!ゲホッ!」
何度も、何度も__血を吐く祐輝、紗波は何もできずに居る。
「…流岡…!?」
冷たい風は、温く紗波の黒髪を撫で、廊下を通り過ぎた。
祐輝が目を閉じて、心底 苦しそうに息をする。
キーンコーンカーンコーン、と軽く踊るようなチャイムの音が鳴った。
目の前に霧が広がって行く。



