君色キャンバス




__手が震える。



「…久岡…踉、と、言う、名前、を…知って…います」



「それは、関係者は知っています。どこからか情報が漏れたのかもしれません」



片宮が腕を組み、紗波を疑わしく見下ろして言う。



「…片宮さん、こいつは本当に…」



祐輝の言葉を、紗波が遮り__大きな声で、建物に木霊させるかのように、言った。



「…この展覧会の絵は、全て…私が描いたものです」



ハッと小阪が息を飲み、片宮の眉が上がり、祐輝は鋭く小阪を睨みつけた。



静かな建物内。



客達はじっと四人を好奇の目で見つめている。



身体が震え始める。



黒い視線を幾つも背中に感じ、視界がくらんでくる。



繊細で美しく、細かく、感情のない絵が天井から吊るされた光りに当たる。



祐輝はそっと優しく小声で、紗波に囁いた。



「…よく言ったな、久岡」



片宮が、建物の中に少しずつ離されて飾られている絵を見回した。



「これが、君の絵ですか…。では、小阪先生の絵ではないと?」



「ちがっ、それは俺の…」



「グチグチうっせえんだよ!この絵は全部、久岡が高校で描いた絵だ!」



紗波がうつむいて、赤い絨毯に落ちた小さな埃を見る。



半信半疑とでも言うように、片宮は、何度も小阪と紗波を見比べた。