君色キャンバス




ギーン…ゴーン…ガーン…ゴーン…



鐘の音と共に昼休みが始まり、亮人は弁当を持つと、席を立った。



「亮人!屋上 行って弁当 食おーぜ!」



「あ、俺 約束あるから無理!ごめんな」



黒髪の男子の誘いを断って、亮人は、中庭へと向かった。



緑や黄色などの鮮やかな色が多い中庭で、卯花高校 制服の紺色は目立つ。



噴水の側のベンチには、紗波が座って、何かをノートに描いていた。



「よぉ、来たぜ」



紗波はなんの反応も示さず、鉛筆を動かし続けている。



(…なんか地味に傷つく)



紗波の隣に座り、ノートの中を覗き込んだ亮人は、驚嘆した。



そこには、鉛筆の濃淡だけで描かれた“中庭”があった。



華々しく咲く赤紫色のサザンカ、煌く水を噴き出していく噴水、気高く泳ぐ鯉、優しい風に揺れる樹__



(…え、これ?これ、絵、かよ…!?)



その絵に感情はない。



「…ふぅ」



一度 息をついて、落ち着いてから、亮人は弁当箱を包む風呂敷を開けた。



「お前は弁当 食わねえのか?腹 減ったりしねえの?」



紗波はコクンと頷いた。



亮人が、弁当の中にある卵焼きをつまみ、口に運ぶ。



沈黙が訪れる。