君色キャンバス




やがて、中庭には、静寂が訪れる。



(…恋って、なに…?)



ソッと鉛筆を止め、顔を上げ、青く澄んだ空に視線を漂わせた。



雲がふわりと飛び行き、青空の向こう側には白い月も見える。



立ち上がり、ベンチにノートと鉛筆を置くと、中庭を歩いた。



サザンカの花が咲く木や、花壇のパンジーの間を縫って歩く。



中庭の端にある、小さな桜の木の下につくと、紗波はしゃがみ込んで、幹の根元を見つめた。



小さな相合い傘が、そこには刻み込まれていた。



__すっと、雨の中で、祐輝と二人、傘の下に入った事を思い出した。



梅雨の時期の事。



思い出した瞬間、ほんの一瞬だけ、胸が小さく波打った。



(…?)



__顔が、熱くなっていくのを感じて、右手を頬に添える。



黒い髪が揺れ、紗波の右手に触れた。



紗波は立ち上がると、ベンチに座り、もう一度、噴水を描き始めた。



噴水は、冷たい大気に満ちた中庭で、涼やかな音色を奏でる。