考え込む仕草を見せる小百合に、紗波は無機質な声で囁く。
「…大丈夫」
その言葉に、小百合が少し驚嘆したような反応を見せ__苦笑いをした。
二人の頭上を、赤いアキアカネが、悠々と飛んで行く。
「…そうだよね」
肌寒いような爽やかな風が、道の端に生えた草や、紗波と小百合の髪を揺する。
「…もう、私を使う意味なんてないし…もう一度くらい、信じても良い…よね?」
小百合の不安げな問いに、紗波は無表情のまま、一度だけ首を縦に振った。
そして、田んぼに顔を向ける。
田んぼの向こうに、山並みが見える。
田舎でも、都会でもないこの街から見える山並みは、まだ色づいていた。
あの紅葉も、十一月に入れば散る。
「紗波、最近 寒いから、冬服着て来ないと風邪 引くよ?」
「…うん」
燃えるほどの赤い夕日が、街を、真朱色に染めていく__