「アタシがナンバーワンになっても…。まだ…。お父さんもお母さんも…。認めてくれない…」
次々と、涙が目から溢れていき、美術室の木の床にポツポツとシミをつけた。
電気が瞬いては、暗く明るく部屋の明度は変わる。
「誰一人…。久岡は…。何もしてない、のに、認めてくれる人が居て……。悔しかった…!」
太陽は顔を出さず、光りはどこからも放たれない。
山の向こうに見える空は、だんだんと明るくなっていく。
光は、付けっ放しの薄暗い電気に、照らされるばかりだ。
「お父さんもお母さんも、ワザと、灯ばっかり褒めて、灯ばっかり甘やかして、灯ばっかり…。認めて…」
身体から力が抜けていき、光は床に手をついた。
木の床は、ほんの少しだけ柔らかく、光を受け止める。
「誰かに…。アタシを…。認めて、ほしい、のに…。うっ…う…うぅ…」
頬を、幾筋もの透明な涙が伝って行く。
「久岡は…。認めてもらってる…。くせに…。う…うっ…うぅ…」
泣き声だけが、美術室の中に響いた。



