君色キャンバス




過去の苦く哀しい思い出を、ギュッと心に押し留めた事もあった。



「一番じゃないと、お父さんもお母さんも私を認めてくれないのに…!」



光の心もまた、紗波のように__闇色に染まっていた。



頬を伝う何かは止まらない。



「出来損ないは、いらないって言われた…。アタシには存在がない…!」



グッと手を握りしめる。



下唇を噛むと、鉄の味が滲んだ。



「だから勉強をガムシャラに頑張った…!そして、やっと、別の高校でナンバーワンになれた…!…でも…」



(せっかく、ナンバーワンになったのに…!)



陰鬱な黒い思いは渦を巻く。



「…転校すれば、また、久岡が居た…」



紗波は、ジッと話に耳を傾けているのか、光の瞳から目を逸らさなかった。



頬を伝う何かが、“涙”だという事に、光は気づく。



「中学でも、高校でも…。久岡は何もしてないのに、成績ナンバーワン…。アタシは、必死で頑張って…なのに…」



紗波の顔を、睨みつける。



「追い抜かしたくても、追い抜かせない。だから、引き摺り下ろす事に決めた…」



闇の中に光りは差し込まない。