君色キャンバス




髪の先から水が滴る。



「代金は三千円となります」



財布から、千円札を三枚 抜くと、店員に渡した。



「…では、お部屋へご案内します」



店員につられ、店の奥へと入っていき、一つの個室の中に入る。



清潔なソファの側に置かれた毛布に、水のシミができた。



一つの、明るい表紙の漫画を持ってくると、ポケットに入っていたケータイを、一度 取り出す。



ケータイには、誰からの着信もない。



「…っ…」



漫画を本棚に戻しに行くと、部屋に鍵をかけ、制服を脱ぎ、下着姿になる。



ソファに寝転び、毛布をかぶると、ケータイのマナーモードを解除する。



そして、ゆっくりと目をつぶり、一筋、涙を流した。



ケータイが鳴る事は、一度もなかった。