「お母さん、凄い難しいテストあったんだけどね…アタシ、二百二十三人中…二位だったよ」
明るいリビングで、光は、ソファに座って灯と話している母に駆け寄った。
__光がリビングに入った途端、笑い声が消え、母が光の方を向く。
「…そう。見せて」
興味なさげにそう言った母に、右肩に下げた生徒鞄を開けつつ、言う。
「う、うん…。まぁ、百点じゃないけど、殆どの子が五十点以下でね」
鞄の中からテスト用紙を取り出し、赤いペンで『九十八』と書かれた方を母に向けて渡した。
母は、無表情でそれを受け取る。
「…二百二十三人中、二位?」
母が尋ねると、光は不安げな苦笑を浮かべて、頷く。
窓の外は暗く、雨がそぼ降る。
光の家の中には、美味しそうなカレーの香りが漂っている。
「うん…その子__久岡って子には負けたけど、二位は凄いって友達も言って…」
「…え、お姉ちゃんって、二位なの?」
灯が、そう言って、純真無垢な明るい笑顔を浮かべた。
「あたしは満点で、二百五十人中、一位だよ?凄くない?」
母の動きが、一秒ほどだけ止まる。
「…今は灯に聞いてないって。それより、お母さん、どう?」
キッと灯を睨むと、テストに目を通したらしい母が、光を見た。
その母の瞳に、少しだけ、期待する。



