君色キャンバス




紗波は感情を表さず、光を眺めている。



「…あんたは、小百合とか、流岡とかいう不良に、認めてもらってんじゃん…!」



チュン、とどこかで悲しげな小鳥の鳴き声がした。



光は、今までの心の中の鬱憤を、紗波に吐き出していく。



__自分が、涙声なのに気づいても。



「どうせ虐待されてるって言っても、軽く叩かれたりとかでしょ?構ってもらえるだけ、マシじゃない!」



放たれた言葉に、ピクリと紗波が揺れるのが見えたが、それに構わず声を紡ぎ出す。



「アタシなんて…存在がないのに!」



山の向こうから上がる太陽はまだ見えず、美術室には一筋の光りも差さない。



時々点滅する美術室の電気だけが、紗波と光を照らしていた。



「…家じゃ、構ってもらえるのは、成績ナンバーワンの妹ばっかり…!アタシはいつまでもナンバーツーで…!」



妹の灯(アカリ)の顔を思い出しては、その度に嫉妬した。



(灯ばっかり…!)



その思いで、光はずっと毎日を過ごしてきていた。



妹ばかりが甘やかされる家から飛び出し、喫茶店で勉強をしながら、その日を過ごした事もあった。



__誰も、追いかけてはくれなかった。