出発してから三十分程度が経った。 朝日はやっと目を覚まし、山の紅葉や町のあちこちを明るく照らしている。 紗波の長い髪を、風が扇ぐ。 車通りもだんだんと多くなっていき、時折、祐輝や紗波を疎ましげに見る者も居た。 その視線は鋭い。 紗波が恐怖を感じ、抱きしめる腕に力を込めると、祐輝が優しく言う。 「気にすんな。あんなの、慣れたら終わりだって」 その言葉を聞いて、安心感に包まれる。 紗波はギュッと祐輝を抱きしめたまま、目を閉じた。